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【大野裕の言の葉だより】 第34回 『認知に至る王道は感情である』

2025年06月30日 19:17

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.35 [2025/6/18 配信]


第34回
『認知に至る王道は感情である』

認知行動療法は、「感情」と「考え」の関係に目を向けながら、現実の問題に対処するこころの力を育てるアプローチです。
認知療法の創始者のアーロン・ベック先生は、「認知に至る王道は感情である」と言っていますが、これは、精神分析の創始者のシグムント・フロイトの「無意識に至る王道は夢である」という言葉をもじったものです。

フロイトは、夢が無意識を表していて、起きているときには抑圧されている願望や欲求が夢の中に象徴的に現れると考えていました。ですから、初期の精神分析で主流だった夢分析では、夢の内容を解釈することによって、個人の無意識的な欲求や願望を明らかにしていっていました。
精神分析はさらにその後、転移のなかで無意識を明らかにして解釈をするようになりました。

一方、認知行動療法は、無意識を想定していません。無意識が本当に存在するかどうかわかりませんし、仮に存在していたとしても、意識できないので自分の力ではどうすることもできないからです。ですから、認知行動療法では、意識しようとすれば意識することができる、自動思考と呼ばれる瞬間的に頭に浮かぶ考えに注目しました。

自動思考は、無意識と違って、意識すれば自分で気づくことができますし、現実に検証することができます。そのきっかけになるのが、感情です。感情は自然にわいてきて、自分で気づくことができます。ですから、その気づきをきっかけに、背景にある考えに目を向けることができます。
このように、感情を入り口に考えに目を向けていくプロセスを、ベックはユーモアを交えて「認知に至る王道は感情である」と表現しました。


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