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【大野裕の言の葉だより】 第6回 『認知行動療法と概念化・定式化』

2024年02月25日 20:06

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.6 [2024/2/13配信]


第6回

『認知行動療法と概念化・定式化』

前回、認知行動療法でも歌舞伎と同様に、上手に型破りすることが大事だと書きました。

それでは、必ずしも守らなくても良い型と、これだけは守らないといけないという型はあるのでしょうか。

認知行動療法では、概念化と治療関係を重視することと、
1回の面接の流れの型は守らなくてはならないと考えられています。

一方、スキルの使い方はマニュアルで示されている順番通りに使えるものではなく、
相談者の心の状態や環境によって使い分ける必要があります。

概念化ないしは定式化というのは相談に来た人の生まれ育ち、

相談する必要のある問題が生じたきっかけや、その後も問題が続いている背景に加えて、

その人が持っている個人的な強みや周囲のサートなどを総合的に判断して、

どのように課題に取り組めば良いかをその人と一緒に考え、明確にしていく作業です。

認知行動療法は、自動思考と呼ばれる心が揺れたときに頭に浮かんだ考えを手がかりに、

現実を俯瞰しながら問題に対処するアプローチです。

そのために、こころが動揺した場面を切り出して、出来事、自動思考、感情の変化、
行動、身体の反応を書き出すミニ定式化さえできれば良くて、
その人の過去を振り返る必要はないと誤解されていることが少なくありません。

しかし、今にだけ目を向けていたのでは、その人を一人の人間として理解して、

その人が自分らしく生きていくのを手助けしていくことはできません。

私たちは誰もが生きてきた過去を持っています。これから生きていく未来もあります。

そのなかでの今だということを理解しておくことが、認知行動療法でも、いや認知行動療法だからこそ大切なのです。


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