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【大野裕の言の葉だより】 第11回『常識の精神療法(心理療法)』

2024年05月06日 13:16

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.11 [2024/4/22配信]


第11回

『常識の精神療法(心理療法)』


前回、認知行動療法は常識の精神療法(心理療法)だと書きました。
悩んでいる人が自分らしい生活、自分が主役の生活を送れるように、
私たち誰もが使っていて生活の知恵とも言える対処法を上手に使えるように手助けしていくのが認知行動療法だという意味で、
そのようなことが言われています。

こうした考え方は、相談に来た人の話を治療者が聞くときのヒントにもなります。

相談に来た人は、いろいろな悩みを口にします。
そのとき、治療者は二つのことを意識すると良いと私は考えています。
それは、相談に来た人がしている工夫と、治療者自身がする工夫です。

まず、相談に来た人がしている工夫について考えてみましょう。
相談に来た人は、つらい体験を話します。

治療者がその人の気持ちに共感することはもちろん大事ですが、その人の工夫にも目を向けるように意識する必要があります。
悩んでいる人はつらいので、自分が困っている問題について一生懸命話します。
話を聞いている専門家も、その人の苦しみを何とかして楽にしたいと考えて、問題にばかり目を向けます。

そうすると、相談者も治療者もその苦しみの中でどのような工夫をしているかというところに目が向かなくなります。

困っている人は、つらい体験をしているだけに、いろいろと工夫をしています。
そもそも、相談に来たこと自体が素晴らしい工夫です。
そうした工夫ができるこころの力こそが、困難を乗り越えていくパワーになります。

ところが、問題にばかり目を向けてしまうと、何もできない無力感が強くなって、先に進んでいくことができなくなります。

共感し、手助けしたいと思えば思うほど、その人の力を削ぐ可能性があるので、治療者は気をつけなくてはならないと私は考えています。


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