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【大野裕の言の葉だより】 第13回『レジリエンスに目を向けた認知行動療法』

2024年06月11日 20:44

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.13 [2024/5/26配信]


第13回

『レジリエンスに目を向けた認知行動療法』

前回紹介したクリス・パデスキー先生は、レジリエンスに目を向けた認知行動療法を提唱しています。
レジリエンスという言葉にしっくりくる訳語がないので、カタカナで表記されることが多いのですが、
復活力、回復力、逆境力など様々な訳語が当てられることもあります。

つまり、逆境におかれてもへこたれないで回復し、復活していく力です。
日本ポジティブサイコロージー医学会の仲間と訳出した「ポジティブ精神医学」(金剛出版)のなかでは、
「曲がっても折れない力、曲がっても元に戻る力」と解説されています。
さらに言えば、曲がったことをきっかけにさらに成長していく力と言うこともできるでしょう。

レジリエンスは、誰もが持っているこころの力ですが、私たち医療や福祉の専門家に相談に訪れる人のなかには、
自分にはレジリエンスなどないとあきらめてしまっている人が少なくありません。
そうした人たちに対しては、これまで大変だったときのことを尋ねると良いとパデスキー先生は書いています。

これまで生きてきたなかで、誰もが大変な体験をしています。
そのときのことを語ってもらうと、その中からその人の生き抜く力が見えてきます。
というのも、その状況を自分なりに生き抜いてきたから、今その人は私たちの前に来ているのです。
それも、あきらめないで相談に来ているのです。
そのこと自体が、その人にレジリエンスがあることを示しています。

ですから、そうした厳しい状況のなかでどのようにして生き抜くことができたのかに
一緒に目を向けることができれば、その人のこころの力を確認することができます。
そのことがわかれば、相談を受けている専門家にとってはもちろんのこと、
相談している人たちにとっても心強いメッセージになりますし、先に向かって進んでいこうという気持ちにもなってきます。

こうしたことから、最近の認知行動療法では、これまでの生活歴を聞くなかで、
困難な状況をどのように乗り越えてきたかにも注意を払う必要性が強調されるようになっています。


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