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【大野裕の言の葉だより】 第14回『セラピストのコンピテンシーと治療構造』

2024年06月23日 18:23

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.14 [2024/6/13配信]


第14回

『セラピストのコンピテンシーと治療構造』

認知行動療法は治療効果が実証された精神療法(心理療法)と言われています。
実際にそれを裏づける研究も多く行われています。
うつ病の場合、薬物療法は服用を中断すると症状が再燃することが多い一方、
認知行動療法を受けた人は治療効果がその後も持続するという結果も示されています。
それは、認知行動療法が単に症状を軽くするだけでなく、
悩んでいる人自身が自分のセラピストになれるように手助けしていることを裏づけています。

しかし、そうした研究をよくみると、必ずしもすべての研究で認知行動療法の効果が実証されているわけではありません。
思うような結果が得られなかった研究もあります。

そのように期待した結果が得られなかった研究を検証してみると、
治療者のコンピテンシー、つまり治療者としての能力が強く関係していることがわかりました。

当たり前のようですが、経験豊富で能力のある治療者が認知行動療法を実施すると、それだけ治療効果が期待できるのです。
そのように言われると、どこに注意すれば治療者としての能力を高めることができるか気になるのではないでしょうか。
そのときに大事になるのが治療構造です。

治療構造というのは、1回の面接を進める進め方です。
序盤では、現在の状態を確認したり、前回の面接や生活での体験、ホームワークを振り返ったりしながら、
アジェンダと呼ばれるその日に話し合う具体的な話題をきめます。
アジェンダの背景にある認知や行動に焦点を当てたスキルを選択して取り組む中盤を経て、
全体を振り返りながらホームワークを決める終盤の取り組みが行われます。

このように明確な治療構造があることで、相談に来た人は不必要なエネルギーを使わずに問題に取り組めるようになります。
それもあってのことでしょう。
こうした構造をきちんと守って認知行動療法を実施できると治療効果が上がることも、これまでの研究からわかっています。
なかでも、アジェンダ設定とホームワークの設定や見直しが特に重要だと指摘されています。


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