ぬくもっとCBT|CBTぬくもりと情報のポータルサイト

【大野裕の言の葉だより】 第15回『治療を構造化する意味』

2024年07月07日 17:08

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.15 [2024/6/23配信]


第15回

『治療を構造化する意味』

前回、認知行動療法が効果を発揮するためには、治療構造が重要だと書きました。
50分の面接では、10分間の導入部の後に、30分くらいかけてアジェンダと呼ばれる課題について話し合い、
残り10分でまとめて、行動計画とも呼ばれるホームワークを出すという構造です。

なぜこうした構造が大事かというと、
構造がはっきりしている方が、悩みを抱えて相談に来た方が話がしやすいからです。
精神的な不調をあまり意識していない人でも、
はっきりしない構造のなかでまとまった話をしなくてはならないのは負担です。
何を伝えたいか、どのような順番で話すと伝わるかを考えながら
話の流れを創り上げていくのは、誰にとっても大変な作業です。

ここまで書いてきて、これまで何度か出演したことのあるテレビ番組での体験を思い出しました。
テレビ番組に出演するのはひどく緊張します。
NHKの「今日の健康」なども1回撮りで、後で編集されることはありません。
ですから、言い間違いをしないようにひどく緊張します。

しかしそのようなときでも、きちんとしたシナリオが作られていて、その流れに沿って
アナウンサーにリードしてもらえると、緊張しながらもおおむね伝えたいことを発言することができます。
枠組みがあり、リードしてもらえる人がいると、それなりの満足感をもって終わることができるのです。

逆に、構造がないと、話がまとまらず、疲労感だけが残る可能性が高くなります。
若いころに、精神科の外来でじっくりと受診者の話を聞いていたつもりなのに、
最後に「話し疲れました」と不満一杯に言われたことを思い出します。
私もまた、聞き疲れをドッと感じました。

このように、きちんとした構造があると、相談に来た人が無駄なエネルギーを使わずに、安心して話ができるのです。


バックナンバー(大野裕の言の葉だより)


--

トップページに戻る
--