【大野裕の言の葉だより】 第22回『CTRS-Rの評価項目:対人能力(2)』
2024年11月15日 03:20
大野裕の言の葉だより
メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.23 [2024/10/25配信]
第22回
『CTRS-Rの評価項目:対人能力(2)』
前回は、ベック研究所のオンデマンド研修動画“Cognitive Behavior Therapy in Practice: Essentials II”(CBTIP-II、改訂版 認知行動療法実践のコツ)をもとに、改訂版認知療法尺度CTRS-Rの評価項目の「対人能力」について説明しました。
対人能力というのは、医療者が専門家としてクライエントに向き合う力です。
治療者は、温かく共感的であるのはもちろんですが、クライエントに人間的な関心を持ち、気持ちを思いやり、専門家として誠実に自信を持って、信頼できる態度でクライエントに接する必要があります。クライエントひとりひとりのニーズや希望に応じて、CBTのスキルを柔軟に使い分けていく力をつけていくようにします。
クライエントの言葉に耳を傾け、クライエントの提案を治療のなかに取り入れる努力をすることも大事です。
ときには、ユーモアのある言葉かけをして、その場を和ましたりするようにします。
そうすれば、クライエントは受け入れられたと感じて孤独感が弱まり、将来への希望が持てるようになってきます。
クライエントを褒めることも大切です。
クライエントができたこと、できていることを適切に褒めると、クライエントは自信を持てるようになり、それが治療関係にも良い影響を与えます。
しかし、話がよくわからないまま「わかりました。とても上手に話していただけました」と根拠もなく褒めるのは逆効果です。
そのようなときには、率直に「こうしたことを説明するのは難しいですね。
それでも何とか言葉にしようと,よく頑張っていただけているのが伝わってきました」と具体的に頑張りを褒めるようにします。
同様に、クライエントの気持ちを無視してまで良いこと探しをすることも好ましくありません。
クライエントができていないと言っているときに、何かできたことを探そうとすること自体は大切です。
しかし、クライエントの気持ちや考えを無視してまで良い面を取り上げようとすると、クライエントは、自分の苦しさがわかってもらえていないと考えるようになる可能性があります。
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