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【大野裕の言の葉だより】 第23回『CTRS-Rの評価項目:理解力』

2024年12月08日 17:44

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.24 [2024/11/18配信]


第23回
『CTRS-Rの評価項目:理解力』

理解力は、良好な治療同盟を築く上で重要な役割を果たします。
精神疾患で医療機関を受診する人たちは、自分自身に対して、周囲との関係に対して、そして将来に対して悲観的になっています。
つまり「自分はダメな人間で、何もできない」「自分のことは誰もわかってくれない」「将来は絶望的だ」と考えるようになっていて、この思考パターンをアーロン・T・ベックは否定的認知の三徴negative Cognitive Triadと呼びました。

そうした考えに支配されているときに、医療機関や相談機関で相談をして、自分の考えや気持ちが理解されたと感じることができれば、その考えが変わる可能性があります。
「わかってもらえる人がいる」とわかると、孤独感が和らぎます。
自分の力で足を運んで相談できたことに気づくと、自分に対するネガティブな考えが変わってきます。
そうすれば将来に希望が持てるようになってきます。
認知の修正というのは、このように体験を通して起きてくるものです。
そして、こうした変化を体験できた認知行動療法に期待を持つようになり、それが治療関係の基礎になってきます。

こうした変化が認知行動療法で起こるためには、治療者が、セッション中にクライエントが話した内容を繰り返したり要約したりすることが大切になります。
しかし、それだけは不十分で、その話を理解したということをクライエントに伝えることも大事です。

認知行動療法では、こうした知的理解に加えて、クライエントの感情にも目を向ける必要があります。
セッションの折々に、クライエントの気持ちを言葉で表現し、感情に関する理解を共有します。
それだけでなく、その気持ちに共感しながら、その場面でそのような感情を持つのは自然なことだと言って受け止め、その上でクライエントが抱えている問題について話し合うようにします。

感情を理解したことを示す場合に、言葉で理解した気持ちを表現することはもちろんですが、声のトーンや表情、身振り手振りなどのボディランゲージを上手に使いながら、理解したことを伝え、共感していくようにします。


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