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【大野裕の言の葉だより】 第2回 『あこがれるのはよそう』

2024年01月28日 19:20

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.2 [2023/12/14配信]


第2回

『あこがれるのはよそう』

前回も書いたように、最近の私のマイブームは、リカバリーを目指す認知行動療法(CT-R)です。

今月初めに開催された日本認知療法・認知行動療法学会でも、

講演やシンポジウム、ワークショップのなかで、いろいろな形で触れさせていただきました。

最終日に開催されたワークショップで、私はトリを務めたのですが、

その冒頭に「患者さんと接するときには、あこがれるのはよそう」と発言しました。

ワールドカップベースボール決勝戦での大谷翔平選手の言葉を使わせてもらったものです。

野球でも認知行動療法でも、あこがれを持って練習することが大事ですが、

実際の試合、実際の面接では、自分の力を信じ、その力を出し切ることが大事です。

そのときに、他の人にあこがれを持っていては、自分に自信を持って力を出し切ることができません。

そういう思いからそのように発言しました。

ワークショップでもシンポジウムでも、それぞれの発表者が語る臨床実践は、

ベックCBT研究所で実践している臨床に匹敵する臨床の知恵や工夫がたくさん含まれていました。

その活動を自分たちの言葉で伝えようとしている発表者の話を聞いて、

私は「あこがれるのはよそう、自分たちの活動を大切にしよう」と伝えたくなったのです。

自分の活動を理論や理屈で説明しようとすると、生の臨床実践から離れていってしまう危険があります。

ですから、私は、それぞれの参加者に、自分の生の体験を大切にしてほしいと考えました。

また、CT-Rは重篤な精神疾患の治療だけでなく、どのような精神疾患を持つ人にも、

また今は精神疾患を体験していない人にも役に立つアプローチです。

そこで最後に、「今までの臨床の中でCT-Rをどのように使っていたか」を思い出してほしいと

参加者に伝え、それをワークショップ後のアクションプランにしました。

注)『重篤な精神疾患に対するリカバリーを目指す認知療法』を出版した岩崎学術出版社のご好意で、

『学術通信』に掲載した原稿「Aaron T. Beckとリカバリー」を転載(下記リンク)させていただきます。

「Aaron T. Beckとリカバリー」(大野 裕/岩崎学術出版社「学術通信」129号)



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