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【大野裕の言の葉だより】 第4回 『新しい年が始まりました』

2024年01月28日 20:25

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.4 [2024/1/15配信]


第4回

『新しい年が始まりました』

今年は、能登半島地震や日航機と海保機の衝突事故が起こるなど、こころが痛むことの多い年明けになりました。
被害を受けた方々にはこころからお見舞いの言葉をお送りしたいと思います。

こうした現実の問題が起きているときに、考えに目を向ける認知行動療法が役に立つかどうか疑問に思う人がいるかもしれません。
現実にひどい出来事が起きていて、悲観的に考えすぎているわけではないので、考えに目を向けても意味がないのではないかと思えるのです。

たしかにそのように考えることはできますが、しかしそれでも、考えに目を向ける認知行動療法はこうしたときのこころのケアの役に立ちます。
というのも、こうした厳しい現実を目の前に突きつけられると、被災した人たちも、そのことを報道やネットで知った人たちも、
自分には何もできないように思えて気力がなくなってしまいやすいからです。
認知行動療法で言われるhelplessness belief(自分は無力だというビリーフ)が強まるのです。

現実以上に、現状を悲惨な状況のように考えてしまうと、復旧や復興に向けての意欲がわいてこなくなります。
一方で、現実の問題を軽く考えようとしすぎると、必要な対応策をとることができなくなります。
いずれの場合でも、現実にきちんと目を向けて問題に対処することの手助けをする認知行動療法が役に立ちます。

認知行動療法で言われる認知の修正は、頭のなかだけで考えを切りかえる、頭の体操ではありません。
こうしたネガティブな出来事で体験される無力感や絶望感などは、
現実をきちんと把握して必要な対応策を考え、行動するなかで、次第に変化していきます。
アーロン・ベック先生は、非適応的な認知の修正は行動を通して起きると言っています。
肌で体験することが大切なのです。

もちろん、今回の能登半島地震のように悲惨な出来事を体験したときに現実に目を向けるにはエネルギーが必要です。
そのエネルギーは一人でいたのでは生まれてきません。そのときには、人と人のつながりが力になります。
その力を使って、可能な範囲で行動するなかで、私たちは先に進んでいくことができるのです。


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