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【大野裕の言の葉だより】 第19回『CTRSからCTRS-Rへ』

2024年09月17日 22:37

 大野裕の言の葉だより 

メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.20 [2024/9/1配信]


第19回
『CTRSからCTRS-Rへ』

先週紹介したベック研究所のオンデマンド研修動画 ”Cognitive Behavior Therapy in Practice: Essentials II”(CBTIP-II、改訂版 認知行動療法実践のコツ)は、認知行動療法の質を評価するCognitive Therapy Rating Scale(CTRS)の改訂版CTRS-Rに沿いながら、認知行動療法の基本的なアプローチをわかりやすく動画で紹介する内容になっています。

この動画で使われているCTRS-Rの前身のCTRSは、1980年に Jeffrey YoungとAaron T. Beckが開発した11項目からなる評価尺度です。それは、アジェンダの設定、フィードバック、理解力、対人能力、共同作業、ペース調整および時間の有効使用、誘導による発見、重要な認知または行動への焦点づけ、変化に向けた方略、認知行動的技法の実施、ホームワーク(アクションプラン)で、CBT研究の研究プロトコールに基づいて開発された治療者の一般的なスキルと認知行動療法スキルを評価します。

個々の評価項目の内容はこの後説明していくことにしますが、Aaron T. Beckたちはこの11項目をきちんとおさえることが、質の高い認知行動療法を実施するために不可欠だと考えました。
そのため、その後CTRSは、ベック・モデルに基づく認知行動療法のスーパービジョンやセッションの評価に使われてきました。
私たちも、2010年に認知行動療法が診療報酬化されたことをきっかけに始まった厚労省のうつ病の認知行動療法研修事業でもCTRSを使っています。

しかし、CTRSの評価基準があまり明確でなく評価者間信頼度が低いことが問題視され、ベック研究所が、評価基準を明確にした改訂版CTRS-Rを開発しました。それがCTRS-Rです。
その後、ベック研究所が行った研究では、評価者間信頼度が高くなり、CTRS-Rの評価と認知行動療法の治療成績が相関することが示され、ベック研究所を中心に広く使われるようになりました。
今年度からは、うつ病の認知行動療法の厚労省研修事業(※)でも使われています。

※「厚生労働省 認知行動療法研修事業」の研修一覧はこちら


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