【大野裕の言の葉だより】 第35回 『思考と感情の違いとは?』
2025年07月18日 15:44
大野裕の言の葉だより
メールマガジン 「ぬくもっとメール」 vol.36 [2025/7/1 配信]
第35回
『思考と感情の違いとは?』
前回、認知行動療法は、「感情」と「考え」の関係に目を向けながら、現実の問題に対処するこころの力を育てるアプローチだと説明しました。
しかも、「感情」を手がかりに、とっさの「考え」である自動思考に注目します。
「感情」の方が気づきやすいのであれば、自動思考ではなく感情に直接働きかけないのでしょうか。
それに対して、「感情は変えることができないが、考えは変えることができるからだ」と説明されることがあります。
でも、考えも変えることは難しく、だから悩んでいるのではないかという疑問がわいてきます。
自分はダメな人間だと思い込んでいるときに、そう考えないようと言われても、簡単には納得できません。
仕事に失敗したり、人間関係がうまくいかなくなったりしているときには、自分がダメな人間だということを裏づける現実が実際に起きているものです。
そのときに重要になるのが、現実と照らし合わせて検証できるかどうかです。
考えは検証できるのに対して、感情は現実そのものだという点に決定的な違いがあります。
悲しくなったり、不安になったりしているとき、その感情は否定しようのない現実のものとして存在しています。
一方、自分はダメな人間だという考えは、現実そのものではありません。もちろんダメな面もあるでしょうが、そうでない面もあります。
そのようにして、自分がダメな部分とダメでない部分が具体的にわかれば、現実の問題に対処するための工夫ができて、気持ちが軽くなってきます。
認知行動療法が、考えに目を向けることを大切にするのは、そのためです。
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